ベラルーシとロシアの「連合国家創設条約」ベラルーシ共和国とロシア連邦は、 一体化に向けたベラルーシ・ロシア両国民の意志に従うとともに両者の歴史的運命の共通性に依拠し、両国市民の死活的な利益に思いを馳せ; 連合国家の創設によって両国の社会・経済進歩の利益のための努力を結集することが可能になると確信し; 1996年4月2日付「ベラルーシ・ロシア共同体形成条約」、1997年4月2日付「ベラルーシ・ロシア連合条約」、1997年5月23日付「ベラルーシ・ロシア連合規約」に掲げられた統合プロセスの発展を継続しようとする欲求によって突き動かされ、また1998年12月25日付「ベラルーシ・ロシアのさらなる一体化に関する宣言」の規定を実現し; 国連憲章の目的と原則への忠誠、他国と平和的・善隣的関係を築く願いを確認し; 一般的に承認された国際法の原則と規範に従って行動し、 以下のように合意した:
第T部 総則
第T章 連合国家の目的と原則 ベラルーシ共和国とロシア連邦(以下、「構成国」と称する)は、「連合国家」を創設し、これは両国国民の民主的法治国家への統合過程の新段階を画すものである。
1.連合国家の目的は: 構成国の兄弟国民の平和的・民主的発展、友好の強化、幸福と生活水準の向上; 構成国の物質的・知的ポテンシャルを結集し、また経済機能の市場メカニズムを活用することもとづいて、社会・経済発展を保証するために単一経済空間を創出すること; 一般的に承認された国際法の原則と規範に従って人間と市民の基本的権利・自由を不断に遵守すること; 調整的な対外政策および国防分野の政策を実施すること; 民主国家の共通の法体系を形成すること; 満ち足りた生活と人間の自由な発展を保証するための条件を整備することに向けられた、調整的な社会政策を実施すること; 連合国家の安全保障を確保し、犯罪と戦うこと; 欧州および全世界における平和、安全保障、互恵的な協力を強化し、独立国家共同体(CIS)を発展させること。 2.連合国家の目的の達成は、経済的・社会的課題の解決の優先度を考慮して、段階的に実施される。それらを実施する具体的な措置と期限は、連合国家機構の決定により、または構成国間の国際条約により定められる。 3.連合国家が形成される度合いに応じて、連合国家の憲法を採択する問題が検討されることになる。
1.連合国家は、構成国の主権的同権、自発性、構成国による相互義務の誠実な実施という原則に依拠する。 2.連合国家は、連合国家と構成国との間の管轄および権限の区分にもとづく。
1.連合国家の目的を実現するために、連合国家の「最高国家評議会」、「議会」、「閣僚会議」、「裁判所」、「会計検査院」が設置される。 2.構成国においては、その国の憲法に従ってその国により設置された国家機構が国家権力を遂行する。
連合国家は、非宗教的で、民主的で、社会的で、法治的な国家であり、そこにおいては政治的・イデオロギー的な多様性が承認される。
1.いずれの構成国も、自発的に連合国家に委譲した権限を考慮しつつ、主権、独立、領土的一体性、国家体制、憲法、国旗、国章、その他の国家的属性を保持する。 2.構成国は、国連その他の国際機関における加盟資格を保持する。国際機関、その他の国際的統合体に単一の資格で加入する可能性については、構成国間の相互合意により定められる。
1.連合国家の領土を形成するのは、構成国の国家領土である。 2.構成国は、連合国家領土の一体性と不可侵性を保証する。 3.連合国家の対外境界となるのは、構成国と他国との国境、または構成国の国家主権行為の領空境界である。 4.国境に関する連合国家の法令が採択されるまでは、連合国家の国境警備は、本条約調印時に構成国が制定していた方式によって実施される。
1.連合国家においては、構成国の領内において承認されているすべての所有形態が平等に承認・保護され、資産を取得、所有、利用、処分する市民の平等な権利が保障される。 2.連合国家においては、あらゆる組織的・法的形態の経済主体にとっての、また構成国の法令により企業家としての地位を有する市民にとっての平等な権利、義務、保護を保証するため、法的その他の必要な措置がとられる。 3.構成国の領内における外国法人の地位および活動方式は、当該分野の法令が共通化されるまでは、構成国の法令および第三国との条約に従って実施される。
連合国家の動産・不動産の所有、利用、処分は、連合国家の法令にもとづいて実施される。
第10条 1.連合国家は、国章、国旗、国歌、その他の国家的属性をもつ。 2.連合国家の国家的象徴は、連合国家議会により制定され、最高国家評議会による承認に付される。
第11条 連合国家の公式言語となるのは構成国の国家言語であり、構成国の国家言語の憲法的地位を損なうことはしない。連合国家機構における作業言語として、ロシア語が用いられる。
第12条 連合国家機構の所在地は、最高国家評議会により定められる。
第13条 1.連合国家は、単一の貨幣単位(通貨)をもつ。通貨の発券は、もっぱら単一の発券センターによって実施される。連合国家において、単一貨幣単位以外の通貨の導入・発券は、許容されない。 2.単一貨幣単位の導入と単一発券センターの形成までは、構成国の領内で引き続き自国の貨幣単位が流通する。単一貨幣単位(通貨)への移行は、本条約第22条に従って実施される。
第U章 連合国家市民権
第14条 1.構成国の市民は、同時に連合国家の市民である。 2.連合国家では、一般に承認された国際法の原則と規範に従い、人間と市民の権利・自由が承認・保証される。 3.構成国の市民権の取得・喪失の問題は、構成国の法令によって管理される。 4.何人も、構成国の市民権を取得することなしに、連合国家の市民となることはできない。 5.連合国家の市民は、構成国の法令、構成国間の条約に別の規定がない限り、他の構成国の領内において平等の権利・義務を負う。 6.市民権の分野における連合法令が採択されるまでは、連合国家市民の法的規定は、同分野における構成国の法令、構成国間の条約、および本条約によって管理される。 7.連合国家の市民は、連合国家議会の選挙権および被選挙権、また連合国家機構の役職に任命される権利をもつ。 8.連合国家の市民は、連合規模の社会団体を創設する権利をもつ。 9.連合国家市民の人物を確認する統一の文書様式が導入されるまでは、構成国の国家機構および地方機構の発給した文書、また構成国の法令および国際条約に従って承認された文書が、連合国家において同等に有効と見なされる。
第15条 構成国すべての市民は、自国の在外公館が存在しない第三国において、相手側構成国の在外公館または領事館から、その国の市民と同等の条件で保護を受ける権利を持つ。
第16条 1. 連合国家市民の基本的権利と自由の実現・保護を促す目的で「人権委員会」が設置される。 2. 「人権委員会」の権限、形成条件、活動方式は、最高国家評議会によって承認される「連合国家人権委員会に関する規程」により制定される。
第U部 連合国家の管轄分野
第17条 連合国家の独占的管轄分野に含まれるのは、以下のとおりである: 単一経済空間、構成諸国の領域内での商品、サービス、資本、労働力の自由な移動を保証する共同市場の法的基盤の創出、経済主体の活動のための平等な条件と保証; 共通の通貨・信用、外貨、税制・価格政策; 競争と消費者保護に関する共通ルール; 運輸およびエネルギー・システムの統合; 共同の軍需発注の策定と割当、それにもとづいた兵器・軍用機器の供給・販売の保証、構成国の軍事力を兵器面で保証する統合化されたシステム; 第三国、国際機関および統合体に対する共通の通商・関税政策; 外国投資に関する共通の法制; 連合国家予算の策定、承認、執行; 連合国家の所有権の管理; 連合国家の独占的管轄分野に属する諸問題にかかわる連合国家の国際活動と国際条約; 地域軍グループの機能; 連合国家の国境政策; 標準、度量衡、気象観測、メートル法、時間の計測、測地学、地図作成; 統計・会計報告、共通データベース; 連合国家機構の体系、その組織・活動方式を制定すること、連合国家機構を形成すること。
第18条 連合国家と構成国の共同管轄分野に含まれるのは、以下のとおりである: 連合国家への他の国の受け入れ; 本条約実施に関連した対外政策分野における調整と協力; 共同の国防政策、軍事建設分野における活動の調整、構成国の軍事力の発展、軍事的インフラストラクチャーの共同利用、連合国家の国防力を支えるためのその他の措置; 軍事・国境問題にかかわる国際協力における相互協力。構成国の締結した軍縮・軍備制限にかかわる国際条約の実施を含む; 民主的改革の実施分野における相互協力、連合国家市民の基本的人権・自由の実現と保護; 構成国の法制度の協調と統一; 合理的な分業に資する投資政策の実施; 環境保護; 環境安全保障、天災・人災の防止とその処理の分野における共同行動。チェルノブイリ原子力発電所事故の被害除去を含む; 科学・教育・文化の発展、諸民族のエスニック的、文化的、言語的独自性の発展; 共通の科学、技術、情報空間の形成; 調整的な社会政策。雇用、移住、労働条件とその保護、社会保障・保険の諸問題を含む; 雇用と賃金、教育、医療、その他の社会的支援を得るうえでの市民の平等な権利; テロ、汚職、麻薬の流布、その他の種類の犯罪との闘争。
第19条 構成国は、連合国家の独占的管轄分野、および連合国家と構成国の共同管轄分野の範囲外では、国家権力の全体系を保持する。
第V部 単一経済空間形成の諸原則
第20条 構成諸国は、単一経済空間を創出する。連合国家では、民法および税法も含め、経済活動を管理する統一化された法制度、その後は単一の法制度が機能する。
第21条 単一経済空間を創出するために、構成国は社会・マクロ経済指標を段階的に接近させるための調整的な措置をとり、共通の構造政策を実施する。
第22条 連合国家において、単一貨幣単位(通貨)が段階的に導入され、同時に単一発券センターが設置される。単一発券センターの基本機能は、単一貨幣単位の安定性の擁護と保証であり、同センターはこの機能を、その他の連合国家機構および構成国の国家機構と協力しつつ実施する。単一発券センターは、連合国家機構に融資を提供したり、連合国家の有価証券の金融市場での発行時にそれを引き受けたりすることはできない。連合国家は、連合国家議会により制定され、最高国家評議会により承認された方式で、融資の提供・受入を行い、融資の保証を行い、起債および有価証券の発行を行う。単一貨幣単位の導入と単一発券センターの形成は、構成国間の協定にもとづいて実施される。
第23条 連合国家では、価格・料金の管理問題も含め、価格形成分野での共通政策が実施される。
第24条 連合国家では、有価証券の自由な流通を想定するところの有価証券の共同市場が機能し、有価証券発行と資本市場管理のためのしかるべき機構が設置される。
第25条 構成諸国は、「バーゼル銀行監査委員会」によって定められた効果的な銀行監査の主要原則に立脚し、銀行その他の金融機関の監査を実施するうえでの基準の統一化を完了し、また同一の公定歩合と共通の銀行預金準備率を適用する。
第26条 連合国家では、対内・対外債務の履行・償還、対外借入と外国投資の実施方式に関し、共通の法制度が形成され機能する。構成諸国は、外国投資に関する法制度を統一化し、本件に関する国際条約を第三国と共同で締結し、国際的な義務を負ううえでの足並みを揃える。
第27条 連合国家では、納税者の連合国家領内での居住地にかかわりなく、共通の課税原則が機能する。
第28条 構成諸国は、第三国、国際経済機関、経済統合体に対して共通の通商政策を実施し、共通の輸出入関税率、共通の関税レジームおよび関税申告・管理方式を採用し、外国貿易活動の国家管理およびそれを実施するうえでの構成国の経済的利益の保護に関する法制を統一化する。
第29条 連合国家では、単一の関税空間が形成され、それには以下が適用される: 共通の輸出管理方式; 共通の非関税管理措置。これには、商品輸出入の数量制限とライセンス制、輸出入が禁止または制限される共通の商品リストの導入が含まれる; 商品輸出入のライセンス、証明書、許可証の相互承認に関する共通方式。
第30条 連合国家の領域内では、統合化された電力・運輸の体系、相互に調整された通信・テレコムの体系が機能する。これらの、またその他の共通インフラ要素の管理方式は、連合国家の法令にもとづいて管理される。
第31条 連合国家では、統一化された労働法制、国民の社会的保護、年金保証分野における法制が機能する。
第W部 連合国家予算
第32条 1.連合国家予算は、連合国家のプログラムとプロジェクトへの資金拠出、機構の維持費を含め、連合国家の機能を保証することをその目的としている。 2.連合国家予算は、年度ごとに合意される構成国の分担金によってまかなわれる。 3.議会によって承認された閣僚会議の提案にもとづき最高国家評議会が定める場合には、同評議会の制定する方式により、その他の財源からも歳入がまかなわれる。 4.連合国家機構および連合国家の部門別・機能別管理機構の財政・経済活動の問題は、連合国家の法令および構成国の法制に従い、連合国家閣僚会議によって管理される。 5.構成国は、連合国家予算に計上されていない行事の実施に関連した支出を、自主的に負担する。 6.連合国家予算は、赤字を出してはならない。 7.「連合国家出納局」が設置されるまでは、構成国の出納局が、自国の領土にかかわる部分の予算を執行する。
第33条 1. 連合国家予算案は、連合国家閣僚会議により、議会に提出される。 2. 予算は、議会による採択後、最高国家評議会によって承認される。
第X部 連合国家機構
第T章 最高国家評議会
第34条 1.「最高国家評議会」は、連合国家の最高機関である。 2.最高国家評議会のメンバーとなるのは、構成国の国家元首、構成国の首相、構成国議会の両院議長である。 3.最高国家評議会の評議には、連合国家の閣僚会議議長、連合国家議会の両院議長、連合国家の裁判所長官が参加する。
第35条 1.最高国家評議会は: 連合国家の発展の最重要な問題を決定する; 自らの権限の範囲内で、連合国家機構を形成する。これには、部門別・機能別管理機構が含まれる; 連合国家議会の代表者院の選挙日を定める; 連合国家議会によって採択された連合国家予算と、その執行に関する年次報告を承認する; 議会によって批准された連合国家の国際条約を承認する; 連合国家の国家的象徴を承認する; 連合国家機構の所在地を決定する; 採択された決定の実現に関する閣僚会議議長の年次報告を聴取する。 2.最高国家評議会は、本条約によって同評議会の管轄とされている、または構成国により同評議会に検討することが提起されているその他の機能を遂行する。 3.最高国家評議会は、自らの権限の範囲内で、布告、決定、指令を発令する。
第36条 1.最高国家評議会議長は、構成諸国が別の取り決めを行わない限り、構成国の元首が輪番制で就任する。 2.最高国家評議会議長は: 最高国家評議会の活動を組織し、その評議を主宰し、最高国家評議会によって採択された法令、また連合国家の法律への署名を行う; 連合国家における状況およびその発展の基本方向に関し、議会に対して年次教書を発表する; 最高国家評議会の委任にもとづき、国際交渉を実施し、連合国家の名義で国際条約に署名し、諸外国および国際機関との関係において連合国家を代表する; 本条約および最高国家評議会によって採択された決定の実現過程に対する統制を組織する; 自らの権限の範囲内で、連合国家閣僚会議に委任を与える; 最高国家評議会の委任にもとづき、その他の機能を果たす。
第37条 1.最高国家評議会による法令の採択は、構成国諸国間の満場一致にもとづくものとする。構成国のうち一国がその採択に反対した場合には、法令は未採択となる。 2.最高国家評議会の評議において、構成国を代表して投票を実施するのは、その国の元首、または元首から委任を受けた者である。
第U章 連合国家議会
第38条 「連合国家議会」は、連合国家の代議・立法機関である。
第39条 1.議会は、「連合院」と「代表者院」の2院からなる。 2.連合院は、ベラルーシ共和国の代表者36名(ベラルーシ国民会議の共和国院と代表者院がそれぞれ代表を派遣)、ロシア連邦の代表者36名(ロシア連邦議会の連邦院と国家院がそれぞれ代表を派遣)からなる。連合院の議員は、非常任の形で活動し、自らの活動に対する報酬を定職の地に応じて受け取る。 3.代表者院は、ベラルーシ共和国側から28名、ロシア連邦側から75名の議員からなり、これらの議員は普通選挙権にもとづき、秘密投票で選出される。 4.代表者院は4年の任期で選出され、連合院は4年の任期で形成される。構成国の1院の任期が終了した場合には、連合院の議員は、当該院からの新たな議員団が編成されるまで、自らの権限を保持する。
第40条 連合国家議会は: 本条約で連合国家の管轄分野とされている諸問題に関する連合国家の法律および「法制度の基礎」を採択する; 構成国間の法制度の統一化を促進する; 連合国家における状況およびその発展の基本方向に関する最高国家評議会の年次教書を聴取する; 閣僚会議の活動に関する報告・情報を聴取する; 予算を採択し、その執行に関する年次および半期ごとの報告を聴取する; 連合国家会計検査院の報告を承認し、その報告・発表を聴取する; 連合国家の名義で締結された国際条約を批准する; 連合国家に加入していない国の議会、また国際的な議会組織との間で協力協定を締結する; 最高国家評議会の提案にもとづき、連合国家裁判所の判事を任命する; 最高国家評議会の提案にもとづき、「人権委員会」のメンバーを承認する; 閣僚会議の提案にもとづき、連合国家会計検査院の委員を任命する; 連合国家の国家的象徴を制定する; 連合国家への第三国の加入問題に関する提案を検討し、しかるべき勧告を採択し、それを承認のために最高国家評議会に送付する; 構成国の議会間の協力関係を保証する; 本条約によってうたわれているその他の権限を行使する。
第41条 1.代表者院と連合院の議員は、連合国家の全領域において、自らの任期中、不逮捕特権を有する。 2.代表者院の議員は、恒常的・専従的な条件で活動し、公務に就いたり、教職、研究職、その他の創造的活動を除いて報酬を伴う活動に従事したりしてはならない。
第42条 1.連合院と代表者院の審議は、議事規則に従って、定期的に開催される。 2.連合院と代表者院は、それらの議事規則に定められている場合を除いて、個別に審議を行う。 3.両院は、各院の議員のなかから議長、副議長(単数)を選出し、委員会(複数)を形成する。各院の議長と副議長は、輪番制により選出される。各院の議長と副議長は、同一構成国の市民であってはならない。 4.両院は、各院の議事規則を採択し、自らの活動の内部規定の問題を決定する。
第43条 1.立法発議権をもつのは、最高国家評議会、連合国家閣僚会議、連合院、また20名以上のメンバーをもつ代表者院の議員グループである。 2.法案は、代表者院に提出される。 3.法案は、代表者院による採択後、承認のために連合院に送付される。 4.連合国家予算によってまかなわれる支出を見込んでいる法案は、連合国家閣僚会議が同意した場合にのみ提出されうる。 5.代表者院の決定は、議員総数の4分の1以上が反対票を投じた場合には、未採択と見なされる。 6.連合国家の法律は、各院の議員総数の過半数の投票で採択される。連合院が法案を承認しなかった場合には、両院は発生した不一致を克服するために調停委員会を設置することができ、そののちに法案は両院の再審議にかけられることになる。 7.採択された法律は、連合院の承認から7日以内に、最高国家評議会議長による署名・公布のために、最高国家評議会に送付される。 8.最高国家評議会議長は、自らと、法律に署名が行われる時点で最高国家評議会議長でない構成国元首にその法律に対する異存がなければ、議会による法律の採択から30日以内にそれに署名を行う。最高国家評議会議長か、法律に署名が行われる時点で最高国家評議会議長でない構成国元首にその法律に対する異存があれば、法律は拒否される。法律に対する拒否は、最高国家評議会議長の決定という形をとり、法律が拒否された日から7日以内に議会両院に送付される。最高国家評議会議長は、発生した不一致を克服するための調停委員会の設置を、議会両院に対して提案する権利を有する。
第V章 閣僚会議
第44条 1.閣僚会議は、連合国家の執行機関である。 2.閣僚会議を構成するのは、閣僚会議議長、両国の政府の長、国務書記(閣僚会議の副議長格)、構成国の外相、経済相、蔵相、連合国家の主な部門別・機能別管理機構の長である。閣僚会議の閣議には、構成国の中央銀行総裁と閣僚が招かれうる。 3.閣僚会議議長は、最高国家評議会によって任命される。同議長には、構成国の政府の長が輪番制で就くことができる。 4.閣僚会議の機能、その構成、またその活動の方式は、最高国家評議会によって承認された規程によって定められる。
第45条 連合国家の国務書記、部門別・機能別管理機構の長は、閣僚会議議長の提案により、最高国家評議会により任免される。
第46条 1.閣僚会議は、本条約と最高国家評議会の決定によって定められた権限に従い: 連合国家の発展問題に関する全般的な政策の基本方向を策定し、それを検討のために最高国家評議会に提出する; 連合国家の部門別・機能別管理機構の形成に関する提案を最高国家評議会に提出し、その活動を監督する; 連合国家の法律および「法制度の基礎」の草案を連合国家議会に提出する; 本条約、連合国家の法令の規定の執行に対する監督を保証し、それらに由来する義務の不履行があった場合には必要に応じて構成国に正当な理由のある上申書を提出する; 連合国家予算案を編成し連合国家議会に提出し、その執行を保証し、予算の執行に関する年次および半期ごとの報告を議会に提出する; 会計検査院の報告、発表を検討する; 連合国家の所有権に対する管理を実施する; 単一経済空間の創出と発展、共通の財政、税制、金融、通貨、為替、価格、通商政策の実施を保証する; 構成国間の法制度の統一過程を調整する; 国際問題、国防・安全保障分野、雇用保証、市民の権利・自由の保証、社会秩序の保証と犯罪との闘争、また文化、科学、教育、保健、社会保障、環境保護の分野において、構成国が共通政策を実施することを促進する; 本条約および最高国家評議会によって委ねられたその他の権限を実施する。 2.閣僚会議は、自らの権限の範囲内で、決定、指令、決議を採択する。 3.閣僚会議の決定事項は、最高国家評議会により停止・廃止されうる。
第47条 閣僚会議議長は: 閣僚会議の活動の指導を実施し、その活動を組織する; 閣僚会議の活動に関する年次報告を、最高国家評議会および連合国家議会に提出する; 閣僚会議の法令に署名を行う; 最高国家評議会の委任により、与えられた権限の範囲内で、連合国家の名義で交渉を行い、国際条約に署名を行う。
第48条 1.閣僚会議は、国務書記が長を務める「常設委員会」を設ける。 2.常設委員会は、最高国家評議会および閣僚会議の議事の準備に責任を負う。 3.常設委員会は、連合国家の部門別・機能別管理機構の活動、構成国の国家機構との相互協力を調整し、最高国家評議会および閣僚会議の下した決定の履行を管理し、連合国家の部門別・機能別管理機構の活動状況につき閣僚会議に定期的に報告し、連合国家発展の日常的な諸課題の実施に関し閣僚会議に提案を行う。
第49条 1.構成国の政府は、常設委員会の委員の候補者を提案する。 2.閣僚会議は、提案された候補者のなかから、委員会の委員を任命する。 3.国務書記と常設委員会委員は、4年の任期で任命される。それらを任期前に解任する手続きは、最高国家評議会によって制定される。 4.常設委員会委員になりうるのは、構成国の市民のみである。一方の構成国の市民が、常設委員会委員の3分の2以上を占めることはできない。常設委員会委員は、個人の資格で任命され活動する。 5.常設委員会に関する規程は、閣僚会議の提案にもとづき、最高国家評議会が承認する。
第W章 連合国家裁判所
第50条 連合国家裁判所(以下、「裁判所」とする)は、本条約および連合国家の法令の統一的な解釈と適用を保証するための連合国家機構である。
第51条 裁判所を構成するのは、最高国家評議会の提案にもとづき連合国家議会により任命された9名の判事である。
第52条 1.判事は、高い職業上・倫理上の資質をもち、構成国の司法上の最高の役職に任命されるのに必要とされる要件を満たす連合国家市民のなかから任命され、個人の資格で活動する。 2.同一の構成国から出せる裁判所の判事は、最大5名とする。 3.判事は独立である。
第53条 1.判事は6年の任期で任命される。判事をさらにもう1期任命することも許容される。 2.2年ごとに、裁判所の判事の3分の1が刷新される。 3.最初の任命に際しては、3分の1の判事が任期2年で、別の3分の1の判事が任期4年で任命される。 4.裁判所は、判事のなかから、裁判所長官および同副長官(単数)を選出し、両者は同一の構成国の市民であってはならない。 5.最高国家評議会は、裁判所の定款と執行規則を承認する。
第54条 1.各構成国、連合国家機構は、本条約および連合国家の法令の解釈と適用に関連するあらゆる問題を、裁判所の審議に付すことができる。 2.裁判所の判決は法的拘束力をもち、公布が義務づけられる。 3.裁判所の判決は、当該の公判における判事総数の3分の2の多数で下される。
第X章 会計検査院
第55条 1.連合国家の財政に対する監督を実施するために、「会計検査院」が設置される。 2.会計検査院は11名の委員からなり、委員は監査・会計機関での職歴をもち、職能と良心に疑いのない構成国市民のなかから、任期6年で任命される。 3.会計検査院の委員は、閣僚会議の提案にもとづき、連合国家議会によって任命される。会計検査院の委員は、どの構成国の市民であるかにかかわりなく任命される。会計検査院の委員のなかで、同一の構成国の市民が7名を超えてはならない。 4.会計検査院委員は、委員のなかから委員長と副委員長(単数)を選出し、両者は2年の任期で職務を果たし、再任もされうる。その際に、会計検査院委員長と副委員長は、同一の構成国の市民であってはならない。 5.会計検査院委員は連合国家の利益のために活動し、自らの職務を履行するうえで完全に独立する。
第56条 1.会計検査院は、連合国家予算の歳入・歳出の金額、構造、使途ごとの執行に対する監督、すべての連合国家機構の歳入・歳出に関する検査を実施し、歳入・歳出の執行が合法的であったかどうかを判断し、また財政の管理がどれだけ合理的であったかを明らかにし、連合国家資産の利用の効率性を管理する。 2.連合国家機構、構成国の監査機関または当該の権限をもつ機関は、会計検査院の照会に応じて、会計検査院に課せられた機能を実施するために必要なあらゆる書類・情報を提出する。 3.会計検査院は、会計年度の決算を行うごとに、閣僚会議と議会に年次報告を提出する。これらの諸機関は、報告の検討にもとづいて、最高国家評議会に連合国家の財政健全化に関する提案を提出しうる。 4.会計検査院は、自らの発意またはいずれかの連合国家機構の要請にもとづき、自らの権限の範囲内で、特定の問題に関する判断を下しうる。 5.会計検査院は、自らの執行規則を制定し、それは閣僚会議によって承認される。
第Y章 公職者
第57条 1.連合国家機構およびそれらの事務局の公職者は、最高国家評議会、閣僚会議、議会の連合院の成員を除いて、連合国家の国家公務員であり、構成国の市民の中から任命される。 2.連合国家機構およびそれらの事務局の公職者は: 自らの職務を遂行するうえで共通の利益にもとづいて行動し、構成国のいかなる国家機構からも、指示を仰いだり受け入れたりしない; 教育、研究、その他の創造的活動を除いて、連合国家機構における職務とその他の報酬を伴う活動を兼職してはならない; 連合国家機構の公職者の立場と相容れない活動に従事したり、自らの公務上の立場をとくに政党、団体、その他の組織の利益のために利用してはならない。 3.連合国家機構およびそれらの事務局の公職者の法的地位、給与支給額、社会的な保護については、閣僚会議の提案にもとづいて最高国家評議会で制定される。
第Y部 連合国家の法令
第58条 連合国家の目的と原則を実施するために、その機構は自らの権限の範囲内で、本条約にうたわれている法令を採択する。それは具体的には、法律、「法制度の基礎」、布告、決定、指令、決議である。連合国家機構はまた、勧告と判断を採択しうる。
第59条 1.連合国家の独占的管轄分野に関しては、法律、布告、決定、決議が採択される。布告と決定は、本条約および連合国家の法律にもとづき、連合国家機構により採択される。 2.連合国家と構成国の共同管轄分野に関しては、「法制度の基礎」、指令、決議が採択される。 3.連合国家の共同管轄分野に関する連合国家の法令は、構成国が当該問題に関する自国の法令を採択することを通じて実現される。
第60条 1.共通の適用を目的とした法律と布告は、すべての部分にわたって義務的なものとなり、その公布後には各構成国の領内で直接的な適用が義務づけられる。 2.連合国家の法律または布告の規定と、構成国の国内法の規定に齟齬がある場合には、連合国家の法律または布告の規定が優先的な効力をもつ。しかしながらこれは、連合国家の法律または布告の規定と、構成国の憲法および憲法的法令に含まれる規定の齟齬には当てはまらない。 3.決定は、すべての部分にわたって、それが対象とする国、自然人または法人にとって義務的なものとなる。 4.布告は、当該国の機構が行動の形態と様式を選ぶ自由を保持したうえで、それが対象とする国にとって義務的なものとなる。 5.決議は、それを介することによって連合国家機構の日常的な活動が保証される法令である。
第Z部 雑則
第61条 本条約を段階的に実現していくのには構成国の憲法に修正・補足を加えることを要する可能性があり、本条約の規定は構成国の憲法に修正を加えるのに必要な国内的手続きを実施したのちに発効するものとする。
第62条 1.本条約の発効後、連合国家議会は、最高国家評議会の提案により、本条約にもとづき連合国家の国家体制とその法体系を制定する「憲法的法令」の草案を審議する。 2.「憲法的法令」は、連合国家議会による承認後に、構成国大統領により審議のために自国の議会に送付され、その後各国の法制度に従って構成国で国民投票にかけられる。 3.国民投票で「憲法的法令」が承認されたのちに、構成国は自国の憲法に必要な追加・修正を加える。
第63条 本条約を段階的に実現する目的で、ベラルーシ共和国とロシア連邦は「連合国家創設条約の規定を実現するためのベラルーシ共和国とロシア連邦の行動計画」を採択する。
第64条 連合国家議会の第1回代表者院の選挙は、構成国議会が当該法令を採択してから6ヵ月以内に実施される。
第65条 1.本条約は、国際法の主体であり、連合国家の目的と原則を共有し、条約に由来する義務を完全に引き受ける他国に対しても、参加が認められる。 2.構成国は第三国の加入申請を検討し、最高国家評議会によって制定された加入のための必要条件が実施され構成国の拡大に伴う手続きが実施されたのちに、第三国を本条約の締結国になるよう招く。
第66条 1.本条約への修正は、構成国、連合国家の議会と裁判所が提起しうる。修正案は閣僚会議によって検討され、承認のために最高国家評議会に送付される。 2.修正は、個別の条約という形をとり、それは構成国による批准が義務づけられる。
第67条 1.構成国は、自国の当該の憲法的手続きを遵守したうえで、全国民の国民投票にもとづき、連合国家からの離脱に関する決定を下すことができる。連合国家からの離脱を希望する国の元首はそれを、最高国家評議会、連合国家議会、他の構成国に書面で通知する。本条約は、当該国で本件に関する国民投票が実施された日から18ヵ月目に、その国に対する効力を停止する。 2.本条約からの離脱は、構成国が条約上引き受け、その実施が一定の時間的間隔によって条件づけられている義務の履行には、かかわりをもたない。
第68条 1.本条約は、第三国に対抗することを意図したものではない。構成国は、以前に締結された国際条約上の義務を遵守する。 2.構成国は、本条約の規定に反する国際的義務を負うことはしない。
第69条 1.本条約は構成国による批准が義務づけられ、批准書を交換した日から発効する*。 2.条約は無期限である。
第70条 1.1996年4月2日付「ベラルーシ・ロシア共同体形成条約」、1997年4月2日付「ベラルーシ・ロシア連合条約」は、本条約が発効した時点で効力を停止する。 2.「共同体」および「連合」の枠内で以前に採択された法令は、本条約に反しない部分が引き続き効力をもつ。 3.連合国家最高国家評議会の最初の評議までは、ベラルーシ・ロシア連合最高評議会がその機能を果たす。 4.連合国家議会の代表者院の選挙が実施されるまでは、ベラルーシ・ロシア連合議会総会が、連合国家議会の機能を果たす。 5.連合国家閣僚会議の最初の閣議までは、ベラルーシ・ロシア連合執行委員会がその機能を果たす。 6.常設委員会が形成されるまでは、ベラルーシ・ロシア連合の定款に従って設置されたベラルーシ・ロシア連合執行委員会事務局がその機能を果たす。
第71条 本条約は、国連憲章第102条に従い登録される。 1999年12月8日モスクワにおいて、ともに正文であるベラルーシ語とロシア語の2通の条文が作成された。
(*条約は2000年1月26日に発効した) ベラルーシ共和国を代表して A.ルカシェンコ ロシア連邦を代表して B.エリツィン
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