カザフスタンから見た関税同盟の問題点

No.0032 2014年1月11日

 カザフスタン版『フォーブス』のこちらのサイトで、カザフスタンから見た3国(ロシア・ベラルーシ・カザフ)関税同盟の問題点が語られている。T.アドヴォカトという弁護士が聞き手になって、カザフスタン国民企業家会議の幹部であるR.オシャグバエフにインタビューしたものをまとめた記事になっている。記事の要旨を、以下のとおりまとめておく。

 カザフスタンの関税同盟加入は、カザフスタンのいくつかの経済部門に打撃を与えた。その端的な例が、ロシアによる自動車リサイクル税の導入で、カザフで組み立てられた自動車をロシアに輸出するのが利益が出なくなってしまったこと。関税同盟は、人口1.7億人の障壁なき共通市場とされていたのに、リサイクル税の問題は、その触れ込みに疑問を抱かせるものである。共通市場が創設される結果、健全な「管轄の競争」が生じ、カザフスタンはより良好なビジネス環境を形成することで、投資を呼び込んで経済を活性化できるはずだった。もしもリサイクル税の問題が解決しなければ、企業家、投資家が、共通市場の論理は常に働くとは限らないというネガティブなシグナルを受け取ってしまいかねない。対抗措置を打ち出すのが通例だが、カザフスタンがWTO加盟交渉を行っていることを考えると、交渉プロセスをさらに難しくしてしまう恐れがある。カザフスタンがいずれかの経済機構に加入することは、それが関税同盟であれ、WTOであれ、あるいはユーラシア経済連合ですら、カザフにとっては充分に有益でありうる。問題は、統合につきプロフェッショナルなアプローチがとられるかどうかだ。ユーラシア経済連合条約に関して言えば、最大の問題は、その膨大な分量である。テキストがあまりに膨大すぎ、それをさらに改善していく作業になじまない。望ましいのは、これとは異なるアプローチである。機構、構造、機能、組織といった基礎的な規定は、批准を伴うような国際条約で決めることが適当である。しかし、その他の問題、特に経済部門別や、特殊な問題は、より低い法的レベルの文書で解決を図るべきである(EUでは大多数の問題が「指令」によって調整されている)。その際に、これらの文書は、専門家がじっくりと練り上げ、充分な交渉時間もとれるように、部門別に策定していくべきである。現在それがどうなっているかというと、カザフの交渉担当官は時間的なプレッシャーにさらされ、カザフの国益を守るという自らに課せられた課題に対処できないでいる。2013年10月にミンスクで開かれたユーラシア最高経済評議会の席で、N.ナザルバエフ大統領はいみじくも、「一般市民に理解不能なような、壮大な条約を作る必要はない」と述べている。関税同盟加入後、カザフが直面しているもう一つの問題が、税関業務のそれである。世銀のランキングDoing Businessの「国際貿易」という項目で、カザフは2006年には全世界で172位だったが、関税同盟加入を経て、2013年にはそれが186位という順位に落ちてしまった。また、関税同盟の技術規制は明らかに過剰になっており、たとえば商品の安全基準に関する指令の数はEUよりも3倍も多くなっている。

2013年のカザフスタン経済の総括

No.0031 2014年1月4日

 カザフスタンに関しては、先日「2013年のカザフスタンの10大ニュース」というのをお届けし、昨年のまとめをすでに行っているが、現地テングリニュースのこちらの記事が、経済に絞って2013年のカザフを総括しているので、その要旨を以下のとおり整理しておきたい。

 2013年最大のニュースは、カシャガン油田生産開始であった。カスピ海北部、アティラウ沖80kmの大陸棚の石油ガス鉱床で、待望の生産開始に漕ぎ着けたものである。本プロジェクトは、世界でも最も高価なものになっており、開発費はすでに1,150億ドルを超えている。当初2005年に設定された稼働は再三にわたって延期され、ようやく2013年9月11日に初の石油生産が実現した。しかし、直後にパイプラインからガスが微妙に漏れる事故が発生し、順風満帆な船出とは行かなかった。注目だった米コココフィリップス保有の権益8.4%は差し当たりカズムナイガスが54億ドルで買い上げ、中国のCNPCに転売する方向になっている。

 もう一つ重要な出来事は、カザフスタン中央銀行総裁の交代であった。10月1日、G.マルチェンコがその職を解かれ、K.ケリンベトフが後任の座に就いたが、新紙幣発行・デノミに関する憶測と絡んで注目を集めた。

 上記中銀総裁の人事にも絡んで、統一国民年金基金の創設が焦点となった。それを主導したのがマルチェンコ前中銀総裁だった。各基金から新たな統一基金への資金移転の手続きは、2013年中には実現せず、2014年に持ち越しとなった。新たな基金の資金は、国債や国営企業の債券(インフラプロジェクト用途)に向けられる予定であり、これらの債券は低リスクではあるものの低リターンである。

 世銀のビジネス環境ランキング「Doing Business」において、カザフは順位を3つ上げ、世界で50位となった。関税同盟諸国の中では最高の順位となっている。

 アリヤンスバンクとテミルバンクの株主構成に変化。国営持ち株組織のサムルクカズナから、元大統領官房長で富豪のB.ウテムラトフが大口の株式を取得した。

 2014年の見通しに関しては、やはりカシャガンの石油商業生産がいつ始まるのかというのが、最大の焦点となる。銀行セクターでは、新中銀総裁による改革、とりわけ不良債権問題の処理、また上述の統一年金基金への資金移転が注目される。