EU統合が優勢になるベラルーシ世論

No.0192 2014年1月9日

 ベラルーシの独立系シンクタンク「社会経済政治独立研究所」より、12月に同国で実施された最新の全国世論調査の結果が届いたので、その一部を紹介することにしたい。

 この中で、まず何より、「ロシアとの統合またはEU加入の選択を迫られたら、貴方はどちらを選択するか?」という設問が興味深いので、その数字を見ることにする。その結果、EU加入と答えた回答者が44.6%、ロシアとの統合と答えた回答者が36.6%だった(無回答が18.8%)。そして、2007年12月以降の同じ設問の回答推移を図示すると、下のグラフのようになる。

 過去6年間で、EU加入の支持者が10ポイントほど増え、逆に対ロシア統合の支持者が10%ほど減っている。当初はロシア派が優勢だったが、2009~2011年頃にロシア派とEU派がほぼ拮抗するようになり、その後は一貫してEU派が上回っている。グラフの描く軌跡を見ても、これは趨勢的な傾向と見て間違いないだろう。

 ただ、ここで注意すべきことがある。これは以前あるところに書いたことだが、確かに、趨勢的に見れば、ルカシェンコ大統領やロシアとの国家統合を支持する国民は、減少傾向にある。しかし、それは有権者たちが古いステレオタイプをかなぐり捨て、民主主義や欧州統合の理念に目覚めていることを、必ずしも意味しない。当国でルカシェンコ大統領や対ロシア統合の支持者となっているのは、年金生活者をはじめとする高齢者、小都市や農村の居住者、低教育水準・低熟練労働者、農民たちである。ルカシェンコ政権が言論の自由を制限しているなかで、彼らのソビエト的な価値観はほとんど変わっていない。世論のシフトはむしろ人口学的に、すなわち旧世代や農民が徐々にその数を減らし、ペレストロイカ以降に教育を受けたような新世代が社会に加わり、また大都市住民が増えることによって生じていると考えられる。人口学的な変動である以上、ゆっくりとしか進まないのだ。

 ちなみに、今回の2013年12月の世論調査では、「ベラルーシは政策を変更して(他の東方パートナーシップ諸国のように)EUと接近すべきだと考える人々もいれば、それに同意しない人々もいる。貴方はどう考えるか?」ということも問われている。その結果、「ベラルーシは政策を変更してEUと接近すべきだ」という回答が44.5%、「ベラルーシは政策を変更してEUと接近すべきではない」という回答が21.7%、無関心という回答が26.6%だった(無回答が7.2%)。これに関する研究所のコメントを抄訳しておく。いわく、この設問では、接近という漠然とした方向性が示されているだけで、ウクライナで問題になっているような「連合協定」といった具体的なことは問われていない。したがって、本件設問の回答状況にもかかわらず、ベラルーシ当局がEUへの接近を渋っているからといって、それがベラルーシ版の「ユーロマイダン」(大衆的な街頭抗議行動)に繋がると期待するには当たらない。それでも、本件設問の回答状況から少なくとも言えるのは、もし仮に政権が政策を変更したら、それは社会のかなりの部分から歓迎されるであろうという点である。ベラルーシ人は、皆が確信的なヨーロッパ派というわけではないかもしれないが、原理主義的なユーラシア派が少数派であることもまた事実である。