日本で買えるウクライナのチョコレートをリポート

 最近、私の勤務先のお菓子女子から、「『おかしのまちおか』という店で、ウクライナのチョコレートを売っていた」という話を聞いた。数日後、実際にそのチョコレートを買ってきてくれた。以前から、ポロシェンコ大統領がオーナーであることで知られるロシェン社のチョコレートが日本でも売られているという話はあったが、「どこそこの店に行くと買えるらしい」といった知る人ぞ知るレベルであり、一般に大量に流通しているという感じではなかった。しかし、「おかしのまちおか」のようなディスカウントチェーン店で売られているということなら、ビジネスの規模として、かなり本格的だろう。

 そこで私は、日本の貿易データを紐解き、ウクライナからのチョコレート輸入がどんな感じになっているか、調べてみた。そのデータをグラフ化したのが、上図である。明らかに、2018年に入って、ウクライナからのチョコ輸入が激増している。これは大変だということで、私自身、近所の「おかしのまちおか」に出かけて、店頭調査を行ってみた。諸々の調査結果を、下に見るようなYouTube動画にしてみたので、ご覧いただければ幸いである。

 輸入販売会社は、千葉県松戸市にある㈱宮田というところ。なお、その後得た追加情報によると、宮田の輸入したウクライナのチョコレートは、「おかしのまちおか」だけでなく、普通のスーパーマーケットでも売られているらしい。

 というわけで、初めての試みとして、YouTube動画を中心としたマンスリーエッセイでした。

(2019年3月21日)

民族色が希薄だったウドムルト共和国

 すでにGLOBE+のエッセイ「マトリョーシカと機関銃 武器産業の聖地イジェフスクを訪ねて ロシアの街物語(6)」で、武器産業の話を中心に、昨年のウドムルト共和国の訪問記を記した。改めて確認しておけば、ウドムルト共和国は、ロシア連邦の沿ヴォルガ連邦管区に位置する地域であり(伝統的な地理区分ではヴォルガというよりもウラルに近いのだが)、ウドムルト人というフィン・ウゴル系の少数民族のために設けられている自治単位である。

 私は、ロシアの地域経済開発を研究テーマの一つとしているので、現地調査のためにロシアの地方を訪れることが少なくない。ただ、ロシアの地方都市はだいたい同じような雰囲気で、地方ごとの街並みや文化の違いのようなものは、あまり感じ取れない。その点、やはり少数民族地域の方が、その土地特有の魅力を期待できそうである。そこで、今月のエッセイでは、民族文化という観点から、昨年のウドムルト共和国訪問の際に感じたことを、ちょっとだけ追記しておきたい。

養蜂業はウドムルト人の伝統的な生業らしい

 結論から言えば、私の訪れたウドムルト共和国の首都イジェフスク、第2の都市ヴォトキンスクでは、ウドムルト民族色をほとんど感じることはなく、普通のロシアの地方と変わらないという印象だけが残った。まあ、共和国の民族構成を見れば、それも当然という気がする。ロシアの少数民族地域にはありがちなことに、ウドムルト共和国における多数派はロシア人の62.2%であり、ウドムルト人は28.0%と少数派。首都のイジェフスク市ではロシア人68.8%、ウドムルト人14.8%、第2の都市のヴォトキンスクではロシア人83.1%、ウドムルト人9.8%となっている。また、ウドムルト人であっても、都市部ではロシア人と混血した人が多く、純粋なウドムルト人には農村くらいでしか出会えないという話を聞いた。結局、私がイジェフスクおよびヴォトキンスクを訪問した際には、「この人はウドムルト人だな」と思えるような顔立ちは、ついぞ見かけなかった。

 「クゼバイ・ゲルド記念ウドムルト共和国国民博物館」を見学したところ、上掲写真に見るように、さすがにウドムルト民族の伝統的な民族衣装や生活様式などが展示されていた。なお、クゼバイ・ゲルドという人物は、ソ連時代の初期にウドムルト民族文化の発展に寄与した詩人・文化人ということである。

国民博物館のヴォトキンスク工場と
イリヤ・チャイコフスキーに関する展示

 それと同時に、ウドムルト共和国国民博物館の展示には、もう一つの柱があった。それは、ロシア人の主導による金属・武器産業をはじめとする工業化の歴史である。ウドムルト共和国の2大偉人と言えば、作曲家のピョートル・チャイコフスキーと、自動小銃の設計者のミハイル・カラシニコフだろう。どちらも民族的にウドムルト人ではなく、一貫してこの地に生きたわけでもない。作曲家の生涯については、これもGLOBE+の別のエッセイに書いたとおり、父のイリヤ・チャイコフスキーが「ヴォトキンスク工場」の工場長として当地に赴任していた関係で、ピョートル・チャイコフスキーはヴォトキンスクの地に生まれたけれど、ここで過ごしたのは8年ほどにすぎなかった。一方、カラシニコフは、前掲のエッセイに書いたとおり、元々はシベリアの生まれであり、彼の設計した小銃がたまたま戦後イジェフスク工場で生産されることになったため、その結果としてこの地と関係を持つに至ったわけである。

イジェフスクにあったウドムルト土産物店
ハチミツやハーブティーなどが並べられていた

 もちろん、イジェフスクやヴォトキンスクといった都市部で、ウドムルト民族色が希薄だからといって、それがいけないというようなことを言いたいのではない(一訪問者としては、ちょっと物足りなく感じたのは事実だが)。ウドムルト共和国という存在は、ウドムルト民族という基層の上に、ロシア人による金属および軍需産業の工業化が乗っかる形で、成立するに至ったという、その二重性にこそ着目すべきなのだろう。

イジェフスク市内にある国立ウドムルト共和国国民劇場

すべてではないようだが、
少なくとも一部の演目はウドムルト語のようだ

 イジェフスクでは、生粋のウドムルト人はほとんど見られないものの、さすがは民族共和国の首都だけあって、民族文化の拠点は整えられている。代表的なのは、上の写真に見る民族劇場だろう。また、下の写真に見るとおり、イジェフスク市内には「バブロヴァヤ・ドリナ」という民族村のようなところがあり、そこのレストランでちょっとだけ民族料理を体験できたのは嬉しかった。もっとも、自然発生的な民族文化というよりは、「創られた伝統」という側面もなきにしもあらずだろう。なお、これもディスっているのではなく、私は「伝統は大いに創るべし」という立場である。

「バブロヴァヤ・ドリナ」の入り口
なお、これはロシア語で「ビーバーの谷」という意味

鳥肉と麺入りのスープ「トクマチ」。同様のものはロシア料理にもあり、塩味が基調だが、
こちらのウドムルトのトクマチは、野菜の出汁がベースの優しい味だった

ロシア料理によくある水餃子「ペリメニ」は、ウドムルトでも名物らしく、
現地語では「ペリニャニ」と呼ぶらしい。生地が茶色がかっているのは、
何か練り込んでいるのだろうか? ソースをつけて食べるので
(私はトマトと豆のソースをチョイス)、味はソースにかなり左右される

メインには、血入りのソーセージを選んだ。ただ、ウォッカの当てならいいかもしれないが、
昼間に酒なしで食べるのには、少々くどい味だったかもしれない

 さて、ウドムルト共和国国民博物館を見学したところ、最後に、非常に懐かしい名前を目にした。ウドムルト共和国の首長を長く務め、2014年に引退したアレクサンドル・ヴォルコフ氏についての展示コーナーが設けられていたのである(下の写真参照)。以前私はロシアの地方政治のことも研究していたので、懐かしく思い出したわけだ。実は、ヴォルコフ氏は2017年5月に亡くなったということである。気になったので確認してみたら、ヴォルコフ氏も民族的にはウドムルト人ではなくロシア人ということだった。

(2019年2月18日)

国境を越えるロシア産MP3

 GLOBE+で毎週エッセイというかコラムを発表するようになってから、目ぼしいネタはそちらに回すようになったのと、余力がなくなったのとで、この「マンスリーエッセイ」のコーナーは先細る一方だ。一応細々ながら続けようとは思っているが、個人的な趣味とか、どうでもいい話ばかりになりそうな気がする。というわけで、今回もまたまた音楽関連である。でも一応、ロシアに関係する。先日、GLOBE+に「ロシアの音楽コンテンツ今昔物語」と題する文章を寄稿したが、その続編のような話だ。

 私の好きなアーティストの1人に、フュージョン系ギタリストのリー・リトナーという人がいる(日本では、歌手の杏里と一時婚約していたことでも知られる)。しばらく前に、某オークションサイトで、リー・リトナー関連のアイテムを物色していたところ、「リー・リトナーのMP3作品集」というものが出品されていた。気になったのでチェックしてみると、ジャケットには「Домашняя коллекция」などとロシア語が書かれており、なるほどこれはロシアで昔良く見た1枚のディスクに圧縮音源のMP3を詰め込んだ作品全集なのだなということが分かった。どういう経緯で日本にもたらされたのかは分からないが、私の持っていないアルバムも収録されていたし、どんなアイテムなのかということに興味があったので、これを購入してみることにした。若干パチモノっぽい雰囲気もあったが、即決価格980円とかで、送料も先方負担となっており、騙されたとしても笑い話で済むレベルだったので、落札してみたわけである。

 後日、送られてきたリー・リトナーのMP3全集は、申し分のないものだった。個人的に欠けていた作品を全部揃えることができたし、操作性も優れていた。最近では、私はCDを買っても、いったんパソコンのライブラリにMP3なりの形式で追加してしまうと、ディスク自体はもう退蔵してしまうことが多い。その点、今回購入したリー・リトナーのMP3全集は、ディスクからPCのライブラリに簡単にドラッグ&ドロップでき、普通のCDから音源を取り込むよりも楽だった。曲目等はもちろん、アルバムのアートワークのデータも入っており、PCに落とすだけで、簡単にライブラリに追加できた。いや~、リー・リトナーのMP3全集、どういう経緯で日本に流れてきたかは知らないけど、良い買い物したなと、悦に入ったのである。

 それでちょっと欲が出て、「もしかしたら、リー・リトナー以外のMP3全集も、日本に入ってきてないかな(笑)」と思い、オークションサイトを検索してみたのだ。そしたら、ビックリ。出るわ、出るわ。オークションサイトで、アーティスト名+MP3で検索すると、メジャーなアーティストは、ほぼ間違いなく出てくることが判明した。今話題のクイーンなんかも、下に見るようなMP3全集が出品されている。まあ私は2年くらい前にクイーンの全部入りCDボックスを買ったので、今さらこんなMP3全集を買おうとは思わないが、正規CDボックスの10分の1くらいの値段で、圧縮音源とはいえ、同じだけの作品をカバーできてしまうのだ。

 改めてオークションサイトを眺めてみると、ロシア製MP3ディスクの販売には2パターンあって、ロシアから発送するとうたっているものと、日本にすでに在庫があるものとに分かれる。何人かの人が、豊富なラインナップのロシア製MP3ディスクを出品しているようだ。私は、最初にリー・リトナーのMP3全集を見付けた時には、「たまたまこんなものが日本に入ってきたのか。ラッキー!」と思って飛びついたのだが、その後オークションサイトの様子を見てみると、どう見ても、何人かの人が商売としてロシア製MP3ディスクを輸入販売しているということがうかがえた。下の画像は、あるアカウントの出品物のごく一部である。

 さらに冷静に考えてみれば、そもそも本当にロシアから輸入しているのかも、怪しいものである。MP3ディスクなんて、いくらでも複製できるはずだし、大元のディスクはロシアから買っているのかもしれないが、後はひたすらジャケットとディスクを日本国内でコピーして、それをオークションに出して売りさばいているのではないだろうか。いちいちロシアからディスクを仕入れて、日本で1000円くらいで売ったりしたら、利益なんか出ないだろうし。もちろん、税金なんかも払っていないだろう。

 というわけで、怪しいアイテムに手を出してしまったことを反省し、今後はこの手の商品には手を出さないようにしようと心に誓ったのだった。

 さて、上で述べたのは、曲がりなりにもお金を払って音源を買う行為だけど、最近は、もっと酷い現象もある。英語でアーティスト名や曲名を入力し、それにプラスして、ロシア語で「ダウンロード」を意味する単語を入力し検索すると、そうした楽曲を無料で聴けるだけでなく、ダウンロードもできてしまうロシア系違法サイトにたどり着く(下に見るのはその一例)。そこでは、「ボヘミアン・ラプソディ」も、「ウィー・ウィル・ロック・ユー」も、タダで聴き放題、落とし放題。

 そもそも、YouTubeで大っぴらにタダで音楽を聴けるようになったり、定額聴き放題サービスが普及したりして、音源を買うという行為自体が変質してきているのも事実だけれど。

(2019年1月23日)